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検索ワード:邪視(殿堂)イビルアイ(殿堂)
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邪視
イビルアイ
2013年01月11日 21:50:32コメント:0観覧数:8526

邪視 (2/2)

 だから、殺せはしないが、それでアイツを逃げされる事が出来たのなら、俺らは助かると思う」
「…それでもダメなら?」
「…逃げるしかない。とっとと車で」

俺と叔父さんは、言い様のない恐怖と不安の中、ジッと岩に座って待っていた。
交代で双眼鏡を見ながら。時刻は4時を回っていた。

96:ほかのも貼っていきます:2011/05/02(月) 20:03:23.43 ID:6OgYSiQM0

「兄ちゃん、起きろ」

俺が10歳の時に事故で亡くなった、1歳下の弟の声が聞こえる。

「兄ちゃん、起きろ。学校遅刻するぞ」

うるさい。あと3分寝かせろ。
「兄ちゃん、起きないと 死  ん  じ  ゃ  う  ぞ  !  !」

ハッ、とした。寝てた??あり得ない、あの恐怖と緊張感の中で。眠らされた??
横の叔父を見る。寝ている。急いで起こす。叔父、飛び起きる。
腕時計を見る、5時半。辺りはほとんど闇になりかけている。冷汗が流れる。

「00、聴こえるか?」
「え?」
「声…歌?」

神経を集中させて耳をすますと、右前方数m?の茂みから、声が聞こえる。
だんだんこっちに近づいて来る。民謡の様な歌い回し、何言ってるかは分からないが不気味で高い声。
恐怖感で頭がどうにかなりそうだった。声を聞いただけで世の中の、何もかもが嫌になってくる。

「いいか!足元だけを照らせ!!」

叔父が叫び、俺はヤツが出てこようとする、茂みの下方を懐中電灯で照らした。
足が見えた。毛一つ無く、異様に白い。体全体をくねらせながら、近づいてくる。
その歌のなんと不気味な事!!一瞬、思考が途切れた。

99:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/05/02(月) 20:08:53.55 ID:6OgYSiQM0

「あぁぁっ!!」
「ひっ!!」

ヤツが腰を落とし、四つんばいになり、足を照らす懐中電灯の明かりの位置に、顔を持ってきた。
直視してしまった。

昼間と同じ感情が襲ってきた。死にたい死にたい死にたい!
こんな顔を見るくらいなら、死んだ方がマシ!!

叔父もペットボトルをひっくり返し、号泣している。
落ちたライトがヤツの体を照らす。意味の分からないおぞましい歌を歌いながら、
四つんばいで、生まれたての子馬の様な動きで近づいてくる。
右手には錆びた鎌。よっぽど舌でも噛んで死のうか、と思ったその時、

「プルルルルッ」

叔父の携帯が鳴った。号泣していた叔父は、何故か放心状態の様になり、
ダウンのポケットから携帯を取り出し、見る。

こんな時に何してんだ…もうすぐ死ぬのに…と思い、薄闇の中、呆然と叔父を見つめていた。
まだ携帯は鳴っている。プルルッ。
叔父は携帯を見つめたまま。ヤツが俺の方に来た。恐怖で失禁していた。死ぬ。
その時、叔父が凄まじい咆哮をあげて、地面に落ちた懐中電灯を取り上げ、
素早く俺の元にかけより、俺のペットボトルを手に取った。

「こっちを見るなよ!!ヤツの顔を照らすから目を瞑れ!!」

俺は夢中で地面を転がり、グラサンもずり落ち、頭をかかえて目をつぶった。
ここからは後で叔父に聞いた話。まずヤツの顔を照らし、視線の外で位置を見る。

少々汚い話だが、俺のペットボトルに口をつけ、しょんべんを口に含み、
ライトでヤツの顔を照らしたまま、しゃがんでヤツの顔にしょんべんを吹きかける瞬間、目を瞑る。
霧の様に吹く。
ヤツの馬の嘶きの様な悲鳴が聞こえた。
さらに口に含み、吹く。吹く。ヤツの目に。目に。

106:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/05/02(月) 20:17:59.50 ID:6OgYSiQM0

さっきのとはまた一段と高い、ヤツの悲鳴が聞こえる。だが、まだそこにいる!!
焦った叔父は、ズボンも下着も脱ぎ、自分の股間をライトで照らしたらしい。
恐らく、ヤツはそれを見たのだろう。
言葉は分からないが、凄まじい呪詛の様な恨みの言葉を吐き、くるっと背中を向けたのだ。

俺は、そこから顔を上げていた。叔父のライトがヤツの背中を照らす。
何が恐ろしかったかと言うと、ヤツは退散する時までも、不気味な歌を歌い、
体をくねらせ、ゆっくりゆっくりと移動していた!!
それこそ杖をついた、高齢の老人の歩行速度の如く!!

俺たちは、ヤツが見えなくなるまでじっとライトで背中を照らし、見つめていた。
いつ振り返るか分からない恐怖に耐えながら…
永遠とも思える苦痛と恐怖の時間が過ぎ、やがてヤツの姿は闇に消えた。

俺たちはロッジに戻るまで何も会話を交わさず、黙々と歩いた。
中に入ると、叔父は全てのドアの戸締りを確認し、コーヒーを入れた。飲みながら、やっと口を開く。

「あれで叔父さんの言う、興味はそれた、って事?」
「うぅん…恐らくな。さすがに、チンコは惨めなほど縮み上がってたけどな」

苦笑する叔父。やがて、ぽつりぽつりと、邪視の事について語り始めてくれた…

109:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/05/02(月) 20:23:12.86 ID:6OgYSiQM0

叔父は、仕事柄、船で海外に行く事が多い。詳しい事は言えないが、いわゆる技術士だ。
叔父が北欧のとある街に滞在していた、ある日の事。
現地で仲良くなった、通訳も出来る技術仲間の男が、面白い物を見せてくれると言う。
叔父は人気の無い路地に連れて行かれた。ストリップとかの類かな、と思っていると、
路地裏の薄汚い、小さな家に通された。叔父は中に入って驚いた。

外見はみすぼらしいが、家の中はまるで違った。
一目で高級品と分かる絨毯。壺。貴金属の類…香の良い香りも漂っている。
わけが分からないまま、叔父が目を奪われていると、奥の小部屋に通された。

そこには、蝋燭が灯る中、見た目は60代くらいの男が座っていた。
ただ異様なのは、夜で家の中なのにサングラスをかけていた。
現地の男によれば「邪視」の持ち主だと言う。

邪視(じゃし)とは、世界の広範囲に分布する民間伝承、迷信の一つで、
悪意を持って相手を睨みつける事によって、対象となった被害者に呪いを掛ける事が出来るという。
イビルアイ(evil eye)、邪眼(じゃがん)、魔眼(まがん)とも言われる。
邪視の力によっては、人が病気になり衰弱していき、ついには死に至る事さえあるという。

叔父は、からかい半分で説明を聞いていた。この男も、そういう奇術・手品師の類であろうと。
座っていた男が、現地の男に耳打ちした。
男曰く、信じていない様子だから、少しだけ力を体験させてあげよう、と。
叔父は、これも一興、と思い、承諾した。また男が現地の男に耳打ちする。

男曰く、
「今から貴方を縛りあげる。誤解しないでもらいたいのは、それだけ私の力が強いからである。
 貴方は暴れ回るだろう。私は、ほんの一瞬だけ、私の目で貴方の目を見つめる。
 やる事は、ただそれだけだ」

120:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/05/02(月) 20:31:54.98 ID:6OgYSiQM0

叔父は、恐らく何か目に恐ろしげな細工でもしているのだろう、と思ったという。
本当に目が醜く潰れているのかもしれないし、カラーコンタクトかもしれない。
もしくは、香に何か幻惑剤の様な効果が…と。縛られるのは抵抗があったが、
友人の現地の男も、本当に信頼出来る人物だったので、応じた。

椅子に縛られた叔父に、男が近づく。友人は後ろを向いている。
静かに、サングラスを外す。叔父を見下ろす。

「ホントにな、今日のアイツを見た時の様になったんだ」
コーヒーをテーブルに置いて、叔父は呟いた。

「見た瞬間、死にたくなるんだよ。瞳はなんてことない普通の瞳なのにな。
 とにかく、世の中の全てが嫌になる。見つめられたのはほんの、1~2秒だったけどな。
 何かの暗示とか、催眠とか、そういうレベルの話じゃないと思う」

友人が言うには、その邪視の男は、金さえ積まれれば殺しもやるという。
現地のマフィア達の抗争にも利用されている、とも聞いた。

叔父が帰国する事になった1週間ほど前、邪視の男が死んだ、という。
所属する組織のメンツを潰して仕事をしたとかで、抹殺されたのだという。
男は娼婦小屋で椅子に縛りつけれれて死んでいた。床には糞尿がバラ巻かれていたと言う。
男は、凄まじい力で縄を引きちぎり、自分の両眼球をくり抜いて死んでいたという。

122:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/05/02(月) 20:34:03.92 ID:6OgYSiQM0

「さっきも言った様に、邪視は不浄な物を嫌う。
 汚物にまみれながら、ストリップか性行為でも見せられたのかね」

俺は、一言も発する気力もなく、話を聞いていた。
さっきの化け物も、邪視の持ち主だっという事だろうか。

俺の考えを読み取ったかのように、叔父は続けた。
「アイツが本当に化け物だったのか、ああいう風に育てられた人間なのかは分からない。
 ただ、アイツは逃げるだけじゃダメな気がしてな…だから死ぬ気で立ち向かった。
 カッパも、人間の唾が嫌いとか言うじゃないか。案外、お経やお守りなんかよりも、
 人間の体の方がああいうモノに有効なのかもしれないな」

俺は、話を聞きながら弟の夢の事を思い出して、話した。
弟が助けてくれたんじゃないだろうか…と。

俺は泣いていた。叔父は神妙に聞き、1分くらい無言のまま、やがて口を開いた。
「そういう事もあるかもしれないな…00はお前よりしっかりしてたしな。
 俺の鳴った携帯の事、覚えてるか?あれな、別れた彼女からなんだよ。
 でもな、この山の周辺で、携帯通じるわけねぇんだよ。見ろよ。今、アンテナ一本も立ってないだろ?
 だから、そういう事もあるのかも知れないな…今すぐ、山下りて帰ろう。
 このロッジも売るわ。早く彼女にも電話したいしな」

叔父は照れくさそうに笑うと、コーヒーを飲み干し立ち上がった。
邪視 (1/2)|邪視 (2/2) |
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